インターネット事業家志望がプログラミングを学ぶということ

はじめに

僕は私立文系大学を卒業し、今の会社に就職しました。インターネットメディア事業を中心に展開している事業会社です。

僕は就活生の頃から、事業を価値決定のフェーズから行う立場でありたいと思っていて、その立ち位置に近いプロデューサー職を希望していました。

でも入社後に配属された先は、スマートフォン向けのアプリケーションを企画開発する子会社で、僕はプロデューサーでも営業でもデザイナーでもなく、プログラマでした。


プログラマの素養として数学の知識が挙げられていますが、そんなものありませんでした。大学の受験科目は日本史です。高校時代は大学の受験科目以外に全く興味がなく、ほとんど勉強していなかったので、中学3年の数学知識で止まっています。

それに決定的なことに、そもそもプログラミング自体に興味があるわけではありませんでした。正直に言えば、ネガティブなイメージも持っていました。一部の人にしか身につけられない、特殊技能だとも思っていました。

しかも、同期は総合職だけではありません。元々プログラミング経験を積んでいる優秀な同期が何人もいます。負けず嫌いな僕にとって、圧倒的なビハインドからのスタートはよくも悪くも苦しいものでした。


そんな、僕にとって衝撃の配属から1年が経ちました。まだまだペーペーな僕も2年目です。

配属された直後は絶望しかありませんでしたが、今となってはいい思い出。プログラマとして配属された事はとても幸せでした。人生でプログラミングに出会えて本当によかった。


僕は環境に恵まれたこともあって、自分でアプリ(サービス)を企画して開発してリリース、その後の運用までを行う経験を積む事ができました。

このアプリは皆さまのおかげもあってAppStoreのソーシャルネットワーキングカテゴリで1位を獲得し、その後もランキング上位を維持しているアプリになりました。もちろん、まだまだ本質的な改善の余地はあると思っています。

今はiOSプログラマとして、様々なアプリケーションの開発に携わらせてもらっていて、微力ながら頑張って働いています。

プログラマとしてキャリアをスタートするということ

プログラミング能力は、僕にとって本当に素晴らしい資産になると思います。

僕はプログラミングを習得し始めるまで、プログラマを経験する最大の利点は「工数が見積もれること」だと思っていました。

これは正解でした。

ある程度の工数が見積もれるようになれば、納期までにクライアントに間違いなくサービスを届けられる確率がグッと上がります。
決められた期限までに納品を行うことは、どの業界にも存在するワークフローでとても重要なことだと思います。

でも最近振り返って思う、もっともっと大きな2つの素晴らしい点があると思っています。それは「実現性が判断出来ること」と「自分で作れること」です。

実現性が判断できる

お金や人の問題で到底実現できないアイデアも時には浮かびます。自分で思いついたその世界観が素晴らしければ、そのアイデアで大きな利益を得ることができるのであれば、どうしても実現したいものです。

でも、実現できるかわからないからこそ、もんもんと長い間考え続けてしまったりします。そうして、ただの評論家になってしまうケースも多いのだと思います。

実現性が判断できれば、企画のPDCAが高速になると思うんです。どうにも無理なら案自体をスクラップして、いけそうなら具体的な実現方法を詰めていく、と「仮想」DOができるわけです。

企画として良いものか悪いものかわからない場合は、プロトタイプを作ることもできます。眼に見えて触れるものがあれば、クライアントからFBを得ることが出来ます。

恐らく、ここで技術力が高いプログラマであれば、より手段を明確に提示できるのだと思います。当初考えていたプランでの実現が難しいと解れば、代換手段を変えることが出来るんだろうなぁと。ブラッシュアップしていって、実現可能な案を導き出すこともできるでしょう。

自分で作れることの素晴らしさ

発起人が抱えている世界観って共有しにくいものだと思うんです。サービスが頭の中に描かれたとき、それは言語化できない直感的なものだと思うからです。

最初から誰かにプレゼンする気マンマンじゃない限り、論理的に説明できる状態ではないのではないかと思うし、言葉は道具なので言語化するなかで削ぎ落とされてしまうエッセンスもあるでしょう。

僕は企画の仕事をやっているわけではないですが、恐らく企画屋さんもとても専門的で手に職をつける職人肌な職業なはずです。

だから属人的であればあるほど、余計に言葉で伝わるメッセージにも限界があります。本当に共有って難しい。

それに、必ずしもメンバーがサービスの狙いに共感してくれるとは限りません。でもここがチームで仕事をする上でのキモで、狙いを理解して共感されていないと、「そのサービスで何が本当に大切か」は誤解されて実装されてしまうのだと思います。

つまり、1番強く世界観を深く正しく理解していて、熱い気持ちを持っているのは他ならない、発起人であるケースが多いと思うんです。


ここでプログラマである利点が活きます。実装力です。

自分で世界観を掲げ、誰よりも熱い気持ちでプロダクトを完成させることが出来ます。モノによりますが、気持ちが1番入っているときに、ガーっと作ってしまう事もできるでしょう。時間さえあれば、そこに関係者間の調整は不要です。

対峙すべきユーザーのイメージからブレず、細部まで神を宿すかのごとく組み立てて行くことができるでしょう。

もちろん、これはプロダクトの性質と、その人の能力次第だと思うし、僕も頑張ってそうありたいと思っています。

最後に

と、書いていきましたが、プログラマとして今仕事をしている僕は、それと引き換えに色んなものを失いました。

経営の経験はもちろん、マネジメントの経験ももちろん、営業の経験もデザイナーの経験も無いし、プロデューサーとしてのスキルセットもゼロです。

いいところもあれば、悪いところも必ずあります。選択することとは、恐らくそういうことなのでしょう。


それぞれの職種で得るものは違うと思いますが、1年前の僕にはプログラマという職種自体がブラックボックスに包まれた存在でした。そこから何が得られるかも、もちろん。

だから、僕はプログラマという選択肢のメリットを把握して、リスクを把握して、選択したわけではなかった。ふわふわした状態でがむしゃらにやってきてしまいました。

そんな僕の体験談でした。こんなものが誰かの参考になれば、ちょっと嬉しいなあと思います。